過去夢の少女
そう質問してくる声は小さくて、近くにいても聞き逃してしまいそうだ。
「ちょっと気になったんだけど、あなたのお父さんの名前を教えてくれる？」

突然こんな質問をするのはおかしいと思うけれど、単刀直入な聞き方しかできなかった。
夢で見たのは高校１年生の頃のお母さんだった。

だとすれば、同じA組にいた河村浩司は、結香の父親かもしれない。
不思議な出会い方をしたからこそ、過去夢を見ることになったんだ。

「私のお父さん……？」
結夏は急な質問にとまどい、眉を下げた。

だけど不愉快な気分にはなっていないようで、少し考えたあと「河村浩司」だと教えてくれた。
漢字まで丁寧に教えてくれたから、間違いなく夢にできていた男子生徒だと確信した。

「さっき何の話をしてたの？」
自分の席へ戻った私に恵がすぐにそう質問してきた。

その顔には焦りの色が浮かんで見える。
きっと、私が他の子に話かけていたから自分から離れてしまうでのはないかと心配したんだろう。
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