過去夢の少女
その3文字は恵にとってとても重たく、そして冷たい刃物になる。

「それで、気になってさっき河村さんにお父さんの名前を聞いたんだよ。浩司だった。漢字も夢で見たのとを同じだから、間違いないと思う」

そう考えれば昨日河村結夏が自分の後ろを通ったときに寒気を感じた理由も納得できる。
私には人と少し違う力があるから、それが拒絶反応を見せたに違いない。

「その夢が本物なら、許せない」
恵が震える声で言った。
その目は釣り上がり、怒りで燃えているのがわかった。

恵にとっては人の母親の過去の話なのに、まるで自分のことのように感じているみたいだ。
「だよね。私も許せない。だけど、どうすればいいかもわからないんだよね」

河村結夏に向けて『あんたの父親が私のお母さんをイジメてた』と言ったところで信じてもらえるとは思えない。

あの大人しい子だからパニックになってしまうかもしれない。
「イジメは大罪だよ。相手の未来を消し去る可能性だってあるんだから」
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