過去夢の少女
『稲田。どうした?』

お母さんの旧姓を呼ばれてハッと顔をあげると、そこにはスーツ姿の見知らぬ男性が立っていた。
ここの先生なんだろう。

『あ、えっと……』
『帰らないのか?』
『か、帰ります』

引きつった声で返事をして逃げるように上履きのままで外へ駆け出した。
どうしてこのとき先生に相談しなかったのか。

夢を見ながら私は思った。
相談していれば、この後の展開が大きく変わっていたかも知れないのにと。
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