過去夢の少女
☆☆☆

同じ1年A組の教室へ入ると、同じ中学だった子たちのグループがひとつだけできていた。
後はみんな互いのことを遠目から見たり、とりあえず席が隣になった子に挨拶したりしている。

でも、一週間もすればこのクラスにも色々なグループができあがっていることだろう。
「私ね、転校先で馴染めなかったの」

席についた恵が恥ずかしそうに両手で顔を覆って言った。
「うん」

「やっぱりさ、中学だとだいだいの子が小学校から仲良くて、グループとか完全にできあがっちゃってて。それで、私だけ馴染めなくてさ」

「イジメられてたの?」
質問する瞬間胸がズキリと傷んだ。
イジメに遭っている恵の姿を勝手に想像してしまった。

「うん……まぁね」
そう言って顔から両手を離して苦笑いを浮かべる。

本人はもう前を向いているつもりでいるのだろうけれど、唇が青くなっていることに気がついた。

恵がどんなイジメられ方をしていたのか知らないけれど、手紙の1枚を書く気力すら奪われていたことは知っている。

私は恵の右手を自分の両手で包み込んだ。
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