過去夢の少女
「大丈夫だよ恵。ここには、そんな連中いない。いたって平気、だって私がいるから」
そう言うとちょっと間が開いて恵がプッと吹き出した。
明るい笑い声がクラスに響く。

「あははっ! 絵梨、そういうこと自分で言っちゃうタイプだっけ?」
「えへへ。たまには自意識過剰になることだって必要だし」
明るい恵の笑顔を見てホッと胸をなでおろし、恵から手を離した。

「でも、そうだね。絵梨とふたりなら何でも大丈夫な気がする」
「うん。お互いにどこの高校を受験するかも知らなかったのに、こうして再開できたんだもん。奇跡だよ」
奇跡と呼ぶにはちょっと弱いと思いつつも、私はそう言った。

それから私と恵は離れていた時間を埋めるように色々な会話をした。
「あれ? 絵梨ってオムライスが一番好きって言ってたよね?」
「今はラーメン! 近所に醤油ラメーンのお店ができてね、それから大好きになったの!」

「そんなお店ができたんだね。今後私も連れて行ってよ」
「もちろんだよぉ! 恵なら大歓迎されると思うよ!」
そんな会話をしていたときだった。

不意に誰かが私の後ろを通り過ぎた。
その気配に全身がゾワリと寒くなり、毛が逆立つのを感じた。

ここは教室だから誰かが後方を通ることくらい普通にあるのに、どうして?
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