過去夢の少女
「たぶんだけど、この後絵梨のお母さんはもっとなにか言われたはずだよ。噂の内容がテレクラだったし、あのタイミングで吐いたら妊娠とかなんとか言ってくるヤツもいたと思う」

そう言われればそうかもしれない。
お母さんは最悪なタイミングでトイレに駆け込んでしまったことになる。
気分が悪くなって吐くことも自由にできないなんて。

私は拳を握りしめて下唇を噛み締めた。

自分が経験したことじゃないのに、これほど悔しく感じるのは恵が言っていた通り私の心と夢の内容がリンクしているからだろうか。

「あの子にも同じような目に遭ってもらわないと」
「そうだね。私もそう思う」

連日見ている夢のせいか、自分が悪いことをしているという認識が徐々に薄れていく。

高校生時代のお母さんが可愛そうで仕方ない。
「よかった。絵梨がようやくその気になってみたい」

恵はニヤリと不敵な笑みを浮かべたけれど、この時の私はそれに気がつくような余裕も持っていなかったのだった。
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