過去夢の少女
疑問を感じて振り向いた瞬間、大きな目と視線がぶつかった。
顔からこぼれ落ちてしまいそうなくらい大きな目が私を見つめて、けれどすぐに逸らされた。
小柄で色白の女子生徒はピンク色のハンカチを手に持っていて、自分の席へと戻っていく。

トイレにでも行っていたのだろう。
つい視線で追いかけていると、恵が「あの子、知り合い?」と、聞いてきた。

「え、ううん、知らない子」
慌てて左右に首を振って答える。
そして黒板へと視線を向けた。

今は初日ということで黒板には席順が書かれている。
さっきの子の席を確認してみると河村結夏と書かれていた。
結香。

きっと夏生まれなのだろうけれど、それとは想像できないほど色が白かった。
華奢で、今も誰とも会話せずに自分の席に座っているだけで、大人しい。

それなのに、なんでだろう。
胸の中がゾワゾワと落ち着きを無くし、私はすぐに河村結夏から視線をそらせたのだった。
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