過去夢の少女
☆☆☆

飯田が教室に戻ってきたのはそれから１０分ほど経ったときだった。
みんなの輪の中に戻って雑談していた私と恵は目を見かわせる。

飯田はなにも言わずに教室後方へと戻っていく。
なにもする気はないんだろうか？

そう思って様子を伺ったとき、「河村さんさぁ、パパ活してんの？」教室中に聞こえる声で飯田がそう質問したのだ。

周囲のざわめきが消えて全員の視線が河村結夏へ向かう。
その目には好奇心がむき出しになっていた。
「俺、オブラートに包んだ質問とかできねぇから、単刀直入に聞くけど、パパ活してんのか？」

「あ……あたしは……」
突然の質問に河村結夏は真っ青になって言葉を失っている。
自分の味方はどこにもいないとわかっている状況下で、これはきつい。

だけど飯田からすれば悪気はないんだろう。
彼は本当に直球でしかなにかをすることができないんだ。

そんなふたりを見て恵がおかしそうに笑い、必死に声を殺している。
< 66 / 186 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop