過去夢の少女
「ハッキリ答えてくれよ。やってんのか? やってないのか?」
河村結夏は怯えた視線を飯田へ向けて微かに震えていた。

やっていないと答えればいいものの、相手が飯田で、こんなに威圧的な質問をされているからパニックになっているのかもしれない。

目には今にもこぼれ落ちてしまいそうな涙が浮かんでいる。
「なにも言わないってことは、なにも言えないってことか?」
「そ、そんなんじゃ……っ」

黙っていることで自分の分が悪くなっていることにようやく気がついたのだろう。

河村結夏が左右に首を振る。
その拍子に目に溜まっていた涙が一筋流れ落ちた。
「お前、パパ活を誰かに強要したか?」
「し、してない!!」

河村結夏が突然立ち上がり、否定した。

顔は真っ青だし今にも倒れてしまいそうだけれど、ハッキリと拒絶するように叫ぶ。
さっきまで笑っていた恵がチッと軽く舌打ちをした。

恵からすれば飯田が真面目過ぎたんだろう。
噂に流されて面白半分で河村結夏を攻撃してくれることを望んでいたに違いない。

だけどそうはならなかった。
< 67 / 186 >

この作品をシェア

pagetop