過去夢の少女
飯田はただの筋肉の塊ではなかったということだ。
「本当か?」
河村結夏はブンブンと縦に首を振る。

この状況だけ見れば私たちの方が悪者に見えるかもしれない。
悪いのは、河村結香の方なのに。
グッと奥歯を噛み締めたとき、教室後方のドアが開く音がした。

こんなときに誰?
そう思って視線を向けると、見たことのない女子生徒が立っていた。

しかも私服姿で目立っている。
全員の視線が彼女へ向かった時、その子が信じられないことをいい出したのだ。

「私です。私が、河村さんにパパ活を強要されていました」
か弱く、細い声。
その言葉に教室中がざわめいた。

まさかこのタイミングでこんな子が登場するとは予想もしてない。
驚いて恵へ視線を向けると、また親指を立てていた。

すべて恵が仕組んでいたことみたいだ。
私服姿の彼女が誰なのか、どうやって言うことを聞かせているのか、聞きたいことは山ほどある。
< 68 / 186 >

この作品をシェア

pagetop