花冠の聖女は王子に愛を歌う
「道理で人並外れて歌が上手なわけですわ。なんといっても女神マナリスの加護を受けているのですから、ただの人間が敵うわけありませんでしたわね。ウィルフレッド様もお可哀想に。ライバルが卑怯な手段を使わなければ、聖女を娶ることができましたのにね。いえ、ウィルフレッド様には残念な結果になりましたが、イスカ様にとってはそれで良かったのかしら? リナリアがウィルフレッド様の妻になっては困りますものね」
「……まあな」
 エルザに視線を投げられ、イスカは頷いた。

「あらあら」
 エルザは赤面しているリナリアを見て笑い、向かいのソファに座った。
 ヴィネッタとイザークもリナリアに祝福の言葉を言ってからエルザの隣に座り、リナリアとイスカもソファに腰を下ろした。

「その光り輝く立方体は何ですか?」
 エルザがテーブルの中央に置いた立方体が気になって、リナリアは尋ねた。
 立方体は相変わらず金色に光り輝いている。
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