花冠の聖女は王子に愛を歌う
「だから、良い案があるなら教えてくれ、ジョシュア。頼む」
 ジョシュアには見えていないと知りながら、イスカは頭を下げた。これはバークレイン一家に対する礼儀だろう。

《では私の案を言おう。イスカ王子とセレン王子は鏡映しのようによく似ていると聞いた。これを利用しない手はない。ベッドから動けぬセレン王子と違って、イスカ王子ならば仮に刺客に襲われたとて自衛できるはずだ。君は相当な魔法の使い手だと聞くからな》

「……ちょっと待ってくれ、まさか」
 イスカの頬が引きつった。

《君の予想通りだ。私はいま兵士の配置、人数、交代時間、巡回ルート、その他諸々の情報収集に勤しんでいる。セレン王子は数日中にイザークが王宮から連れ出す。君はセレン王子のフリをして、セレン王子と入れ替われ》

「いやいや、無理だって! いくら顔が似ていたとしても、すぐ別人だとバレるに決まってる!!」
 イスカは慌てた様子で両手と首を振った。

「おれの特殊な境遇は知ってるだろ!? あいつとは滅多に会えなかったんだ! いくら本人を真似しようとしたって、覚えてないんじゃどうしようも――」
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