花冠の聖女は王子に愛を歌う
「ふっ――ご安心くださいませ、イスカ様。わたくしが完璧に指導して差し上げます」
胸の前で両手を合わせ、エルザがニッコリ笑った。
「二年もお世話をしていましたもの。セレン様の喋り方、笑い方、ちょっとした癖、仕草、動作――全てこの目に焼き付いておりますわ。幸い――というのは複雑ですが、この一年、国王や廷臣たちは時折代理人を遣わしたり見舞い品を贈ることはあっても、セレン様を直接訪ねることはありませんでした。入れ替わっても絶対にバレませんわ。仮にもし怪しまれたら病気のせいにしておけば良いのです。病気って便利ですわね」
「……。いや……でも……。おれがセレンのフリをする……? 嘘だろ……」
「その台詞を言いたいのは俺のほうなんですがね、王子」
イザークの声を聞いて、俯き加減にブツブツ呟いていたイスカは顔を上げた。
胸の前で両手を合わせ、エルザがニッコリ笑った。
「二年もお世話をしていましたもの。セレン様の喋り方、笑い方、ちょっとした癖、仕草、動作――全てこの目に焼き付いておりますわ。幸い――というのは複雑ですが、この一年、国王や廷臣たちは時折代理人を遣わしたり見舞い品を贈ることはあっても、セレン様を直接訪ねることはありませんでした。入れ替わっても絶対にバレませんわ。仮にもし怪しまれたら病気のせいにしておけば良いのです。病気って便利ですわね」
「……。いや……でも……。おれがセレンのフリをする……? 嘘だろ……」
「その台詞を言いたいのは俺のほうなんですがね、王子」
イザークの声を聞いて、俯き加減にブツブツ呟いていたイスカは顔を上げた。