花冠の聖女は王子に愛を歌う
「俺はこれから実働部隊として暗躍しなければならないんですよ。もしバレたら首が飛ぶ、そのプレッシャーと闘いつつ、一国の王子を誘拐するんですよ? いやあ全く、何でこんなことになったんでしょうね? 一体誰のためにこんなことになったんでしょうね? 当の本人が嫌だっていうなら、俺も止めていいですか?」
 イザークはにこにこしている。

「…………いや……それは……困る……」
 とても見ていられないらしく、イスカは目を泳がせた。

「じゃあ文句言わずに頑張りましょうね? お互い」
「……。頑張る……」
 イスカは項垂れるように頭を下げ、両手で顔を覆った。
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