花冠の聖女は王子に愛を歌う
「交信と呼べるほどのものではありませんが、花を咲かせることはできます」
「花……」
セレンは視線で花を探し求めたが、この部屋には花瓶がない。
病弱なセレンは花の匂いというささやかな刺激でさえ発作を起こす危険があるため、メイドがわざと置かないようにしたのだろう。
壁際でやり取りを見ていたユマがいったん部屋を出て、花瓶を持ってきてくれた。
花瓶に活けられた花は匂いをほとんど発しない種類のもので、紫と白い花はまだ蕾。
セレンに聖女としての力を示すにはちょうど良い。
さすがはユマ、完璧な仕事ぶりである。
「リナリアは歌が上手だと聞いたよ。イスカが聞き惚れたというのだから相当だろうね。いまこの場で一曲歌ってみてもらえないだろうか? 曲は何でもいいから」
「はい」
リナリアは息を吸って、ゆったりしたテンポのバラードを歌い始めた。
たちまちセレンは目を見開いた。
花瓶の花が全て咲いたのを見て、その目を無垢な子どものようにキラキラと輝かせる。
すごい。声には出さなかったが、セレンの唇は確かにそう動いた。
他の皆もリナリアの歌に聞き入っている。
「花……」
セレンは視線で花を探し求めたが、この部屋には花瓶がない。
病弱なセレンは花の匂いというささやかな刺激でさえ発作を起こす危険があるため、メイドがわざと置かないようにしたのだろう。
壁際でやり取りを見ていたユマがいったん部屋を出て、花瓶を持ってきてくれた。
花瓶に活けられた花は匂いをほとんど発しない種類のもので、紫と白い花はまだ蕾。
セレンに聖女としての力を示すにはちょうど良い。
さすがはユマ、完璧な仕事ぶりである。
「リナリアは歌が上手だと聞いたよ。イスカが聞き惚れたというのだから相当だろうね。いまこの場で一曲歌ってみてもらえないだろうか? 曲は何でもいいから」
「はい」
リナリアは息を吸って、ゆったりしたテンポのバラードを歌い始めた。
たちまちセレンは目を見開いた。
花瓶の花が全て咲いたのを見て、その目を無垢な子どものようにキラキラと輝かせる。
すごい。声には出さなかったが、セレンの唇は確かにそう動いた。
他の皆もリナリアの歌に聞き入っている。