花冠の聖女は王子に愛を歌う
やがて歌が終わると、セレンは毛布から両手を出し、興奮気味に拍手した。
「君はこの国で、いや、この世界で最高の歌姫だよ、リナリア! 久しぶりに心が震えた! 本当に、本当に、素晴らしかった! もっと歌ってほし――」
急にセレンは顔を背けて咳き込み始めた。
「セレン様!?」
「セレン!!」
「だい、ゲホッ! ゴホッ!!」
「喋るな!!」
身を折って咳き込む兄を見てイスカが叫び、エルザがセレンの背中を摩る。
セレンの発作は激しく、血を吐くのではないかと気が気ではなかった。
やがてセレンはヒューヒューと壊れた笛のような音を繰り返し……どうにか発作は収まったようだった。
「……すまない。心配させて、しまって」
苦しそうな呼吸の狭間でセレンが言う。その瞳は発作の苦痛に潤んでいた。
「謝らないでください。後でいくらでも歌いますから、どうかいまは安静になさってください、セレン様」
「ああ……せっかくの、素晴らしい、歌が。再び弟と会えた、夢のよう、な、夜が。私の、せいで、台無し、に……ゲホッ」
「もういいから喋るなって。頼むから。黙ってろ」
咳き込む兄の肩を掴み、懇願するようにイスカが言う。
「君はこの国で、いや、この世界で最高の歌姫だよ、リナリア! 久しぶりに心が震えた! 本当に、本当に、素晴らしかった! もっと歌ってほし――」
急にセレンは顔を背けて咳き込み始めた。
「セレン様!?」
「セレン!!」
「だい、ゲホッ! ゴホッ!!」
「喋るな!!」
身を折って咳き込む兄を見てイスカが叫び、エルザがセレンの背中を摩る。
セレンの発作は激しく、血を吐くのではないかと気が気ではなかった。
やがてセレンはヒューヒューと壊れた笛のような音を繰り返し……どうにか発作は収まったようだった。
「……すまない。心配させて、しまって」
苦しそうな呼吸の狭間でセレンが言う。その瞳は発作の苦痛に潤んでいた。
「謝らないでください。後でいくらでも歌いますから、どうかいまは安静になさってください、セレン様」
「ああ……せっかくの、素晴らしい、歌が。再び弟と会えた、夢のよう、な、夜が。私の、せいで、台無し、に……ゲホッ」
「もういいから喋るなって。頼むから。黙ってろ」
咳き込む兄の肩を掴み、懇願するようにイスカが言う。