花冠の聖女は王子に愛を歌う
「隙あらばなんて、そんなことありませんよっ!? エルザ様、セレン様に嘘を吹き込むのは止めてください! イスカ様と抱き合ったのはエルザ様に目撃されたときだけです! あれから抱き合ったりはしてませ――」
「でもあなた、魔物の姿のイスカ様を抱きしめたりキスしたり添い寝したりその他諸々したんでしょう? ユマに洗いざらい聞きましたのよ」
「あ! ああああれは!! 完全に魔物だと思っていたから! まさか人間だとは思わなかったから! 私だって、相手が魔物ではなく人間の王子様だと知っていたらそんなことしませんでしたよ!」
「ですって、イスカ様。魔物で良かったですわね」
「ああ。役得ってやつだな。一年も魔物としてさまよってたんだ、あれくらいのご褒美がなきゃ割に合わないよな」
「……もうっ!!」
リナリアが照れ隠しにむくれてみせると、やり取りを見ていたセレンがまた笑った。
「ふふ。イスカにこんなに可愛らしい恋人ができて良かったよ。本当に……」
それきり、セレンは思案顔で黙り込んでしまった。
「セレン?」
「……イスカ。本当に私の代わりに王宮に行くつもりなのか?」
不安げに顔を覗き込んだ弟の目をまっすぐに見つめてセレンが訊いた。
「でもあなた、魔物の姿のイスカ様を抱きしめたりキスしたり添い寝したりその他諸々したんでしょう? ユマに洗いざらい聞きましたのよ」
「あ! ああああれは!! 完全に魔物だと思っていたから! まさか人間だとは思わなかったから! 私だって、相手が魔物ではなく人間の王子様だと知っていたらそんなことしませんでしたよ!」
「ですって、イスカ様。魔物で良かったですわね」
「ああ。役得ってやつだな。一年も魔物としてさまよってたんだ、あれくらいのご褒美がなきゃ割に合わないよな」
「……もうっ!!」
リナリアが照れ隠しにむくれてみせると、やり取りを見ていたセレンがまた笑った。
「ふふ。イスカにこんなに可愛らしい恋人ができて良かったよ。本当に……」
それきり、セレンは思案顔で黙り込んでしまった。
「セレン?」
「……イスカ。本当に私の代わりに王宮に行くつもりなのか?」
不安げに顔を覗き込んだ弟の目をまっすぐに見つめてセレンが訊いた。