花冠の聖女は王子に愛を歌う
「セレン様、ご自分を卑下するのは止めてください。セレン様を好きになったエルザ様も侮辱していることになります」
「ああ、すまない。つい癖で……」
「癖なら治せ」
「はい……」
 ぐうの音も出ないらしく、イスカに睨まれたセレンは小さくなった。
 しかし、すぐに気を取り直したらしく、顔を上げて扉のほうを見る。

「それにしても、エルザも気が早いな。たとえ公爵が許したとしても、父上が許すかどうかわからないのに」

「それだけ嬉しいんですよ、セレン様」
 リナリアが言うと、セレンは何とも言えない顔をして口を閉じた。

「心配するな。許可ならお前の代わりにおれがもぎとってきてやるよ」
 セレンの肩を叩き、自信たっぷりにイスカが言った。
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