花冠の聖女は王子に愛を歌う
ベッドに横たわるセレンの左手首にはイスカの腕輪があった。王城へ行く前にイスカが預けたのだ。
公爵邸に残った彼はこの先、何度も腕輪を見てはイスカのことを思い、心配するのだろう。
「良い目ですわ。自分の使命を思い出したようですわね。では参りましょう、お兄様」
「ああ」
貴公子然とした装いのイザークが歩き出し、エルザとリナリアは彼の後に続いた。
廊下を歩くリナリアたちを多くの人々が気にしている。
向けられる視線には好奇心も含まれるが、おおむね好意的なものだ。
イザークに道を譲った侍女たちは頬を染めて頭を下げ、警備中の兵士たちはエルザに見惚れている。
あらゆる者を虜にしながら美人兄妹は廊下を進み、階段を上り、やがてこの城で最も大きな扉が見えてきた。
扉の両脇では槍を持った兵士が直立している。
(とうとう着いた。着いてしまった)
緊張に喉が渇き、手のひらに汗が滲む。
あの扉の向こうにフルーベルの王がいる。
王だけではなく、大臣や宮中神官長も待ち構えているはずだ。
リナリアが本物の聖女かどうかを見極めるために。
公爵邸に残った彼はこの先、何度も腕輪を見てはイスカのことを思い、心配するのだろう。
「良い目ですわ。自分の使命を思い出したようですわね。では参りましょう、お兄様」
「ああ」
貴公子然とした装いのイザークが歩き出し、エルザとリナリアは彼の後に続いた。
廊下を歩くリナリアたちを多くの人々が気にしている。
向けられる視線には好奇心も含まれるが、おおむね好意的なものだ。
イザークに道を譲った侍女たちは頬を染めて頭を下げ、警備中の兵士たちはエルザに見惚れている。
あらゆる者を虜にしながら美人兄妹は廊下を進み、階段を上り、やがてこの城で最も大きな扉が見えてきた。
扉の両脇では槍を持った兵士が直立している。
(とうとう着いた。着いてしまった)
緊張に喉が渇き、手のひらに汗が滲む。
あの扉の向こうにフルーベルの王がいる。
王だけではなく、大臣や宮中神官長も待ち構えているはずだ。
リナリアが本物の聖女かどうかを見極めるために。