花冠の聖女は王子に愛を歌う
「見ろ」
 リナリアの肩を叩いたイスカは嬉しそうに、ある一点を指さした。
 彼が指さした方向を見れば、茶色の塊の横から芽が出ている。
 神秘的な金色の光を放つそれは、紛うことなく《光の樹》の萌芽だった。

「――!!」
 リナリアは目を見開いた。
 叫びたいが、その声はあまりにも大きすぎて喉から出ようとしない。

「お前ほんとにすげえよ!! 本当におれたちの救いの女神だった!!」
 イスカは歓喜の表情でリナリアを抱きしめた。

「イ、イスカ様、苦しいですっ」
「あ。悪い」
 訴えると、イスカはようやく力を緩めてくれた。
 窒息死を免れたリナリアはほっとしつつ、両手を伸ばしてイスカを抱き返した。お返しとばかりに、力いっぱい。

「やった、やりましたよイスカ様!! もっと褒めてください!!」
「お前は最高の女だ! おれの目に狂いはなかった!」
「そうでしょうそうでしょう! やればできる子なんですよ私!!」
「ああ、お前は本当に凄い!! 世界一偉くて立派だ!! おれはもうお前に夢中だよ!!」
「どうですか、惚れ直しましたか!?」
「惚れ直した!!」
「やったー!! 頑張った甲斐がありました!!」
 心のままに叫び、笑い、じゃれ合う。
 大はしゃぎするリナリアたちを見て、エルザたちは笑っている。

 念願かなって《光の樹》が蘇ったのだ。
 いまばかりは大騒ぎしても、神様だって許してくれるだろう。
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