花冠の聖女は王子に愛を歌う
「《光の樹》を芽吹かせるなんて本当に凄いわ、リナリア。あなたは私の自慢のお友達よ」

 夕食後、デイジーは中庭に面した回廊で甘く微笑んだ。

 ――晩餐会ではあまり話せなかったから、少しお喋りしましょう。

 そう言って、デイジーは人気のない回廊の奥へとリナリアを連れて行った。

 デイジーの背後にある太い柱にはフルーベル薔薇の彫刻が施されている。
 月光が差し込む回廊で、薔薇を背景にして立つ美少女の姿はなんとも絵になった。

「ありがとうございます、デイジー様」

(友達だって言ってもらえた……!!)
 敬愛する女性に友達認定され、胸に感動の波が広がっていく。

 懐かしいデイジーと会話したことで、男爵令嬢だった頃に心が戻ったリナリアはつい反射的に頭を下げそうになったが、脳裏に浮かんだエルザの睨み顔が動きを止めさせた。
< 165 / 308 >

この作品をシェア

pagetop