花冠の聖女は王子に愛を歌う
 驚愕している間に、アルルが近づいてきて首を傾げた。
 大丈夫? と言っているらしい。

「……ええ、大丈夫よ。アルルは魔法が使えるのね」
 アルルは頷き、両前足を大岩に向けて突き出した。
 魔法陣から放たれた水鉄砲が大岩にぶつかって弾ける。
 さっきと違って威力は控えめにしたらしく、水鉄砲は大岩を穿つことなく、大岩の側面と地面を濡らしただけで終わった。

「えっ!? あなた、貴重な光属性魔法だけじゃなく、水属性魔法まで使えるの!?」
 リナリアの仰天ぶりが愉快だったのか、アルルは続いて地面の土を操って土人形を作り、風を起こしてリナリアの頭上に葉っぱの雨を降らせ、前方の空間に真っ黒な靄のようなものを生み出してみせた。

「わ、わかった。あなたがすごい魔法使いだっていうのはよくわかったから、その辺で」
 放っとくとまだまだ魔法を放ちそうなアルルの両肩を掴んで止める。

「あなた本当にすごいわ、アルル。助けてくれてありがとう」
 頭を撫でると、アルルはくすぐったそうに首を竦めた。

「……でもね、魔法を人に向かって撃ったらダメよ? 誰かに危害を加えられそうになったときは容赦しなくていいけど、相手の命を奪うのは禁止。特に、あの光線《ビーム》は何があっても撃っちゃダメ。約束してね?」
 アルルは頷いた。
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