花冠の聖女は王子に愛を歌う
「……あなたが連行されたら、デイジー様はきっと泣いてしまうわよ?」
初めて、クロエの無表情に亀裂が入った。
彼女は小さく笑ったのだ。
嘲るような。自虐するような――泣き出す寸前のような、歪んだ笑顔だった。
「……ああ……そうですね。きっとデイジー様は泣くでしょうね……」
虚ろな顔で呟きながら、クロエはお仕着せのポケットから小さなナイフを取り出し、鞘を捨てた。
鈍く輝く刃を見て、身の危険を感じたリナリアは慌てて後ずさったが、クロエはそもそもこちらを見ていなかった。
「……『王妃殿下に栄光あれ』」
クロエは俯き加減に呟き、ナイフを両手で持った。
そして、その刃先をリナリアではなく、自分の胸に向ける。
(えっ。なんで――!?)
初めて、クロエの無表情に亀裂が入った。
彼女は小さく笑ったのだ。
嘲るような。自虐するような――泣き出す寸前のような、歪んだ笑顔だった。
「……ああ……そうですね。きっとデイジー様は泣くでしょうね……」
虚ろな顔で呟きながら、クロエはお仕着せのポケットから小さなナイフを取り出し、鞘を捨てた。
鈍く輝く刃を見て、身の危険を感じたリナリアは慌てて後ずさったが、クロエはそもそもこちらを見ていなかった。
「……『王妃殿下に栄光あれ』」
クロエは俯き加減に呟き、ナイフを両手で持った。
そして、その刃先をリナリアではなく、自分の胸に向ける。
(えっ。なんで――!?)