花冠の聖女は王子に愛を歌う
直後、稲妻のような速さでやってきた誰かがクロエの手を掴んでひねり上げた。
草むらの向こうへと飛んで行ったナイフから視線を転じてそちらを見る。
クロエを拘束し、完全に動きを封じているのは――息を切らしたイスカだ。
リナリアを心配して、政務を切り上げてまで駆けつけてきてくれたらしい。
「……は。今回は、ギリギリ、間に合った」
どこから走ってきたのか、肩で息をしながらイスカは口の端を上げた。
「セレン様!!」
本当の名を呼ぶことはできないから、感激は声で表した。
「さて――なんで自殺しようとしたのか。黒幕は誰なのか。知ってることを全部喋ってもらおうか」
イスカの言葉を受けて、クロエは観念したように目を閉じた。
草むらの向こうへと飛んで行ったナイフから視線を転じてそちらを見る。
クロエを拘束し、完全に動きを封じているのは――息を切らしたイスカだ。
リナリアを心配して、政務を切り上げてまで駆けつけてきてくれたらしい。
「……は。今回は、ギリギリ、間に合った」
どこから走ってきたのか、肩で息をしながらイスカは口の端を上げた。
「セレン様!!」
本当の名を呼ぶことはできないから、感激は声で表した。
「さて――なんで自殺しようとしたのか。黒幕は誰なのか。知ってることを全部喋ってもらおうか」
イスカの言葉を受けて、クロエは観念したように目を閉じた。