花冠の聖女は王子に愛を歌う

それはまるで夢のように

 一週間後。

 王宮の中庭では国王主催のガーデンパーティーが開かれていた。
 といっても、大々的なものではない。

 集められたのは二人の王子、筆頭書記官メイナード、宰相アーカム、それから国の重鎮と四大公爵家。
 バークレイン家からはイザークとヴィネッタが出席していた。

 ジョシュアは多忙という至極真っ当な理由で。エルザは体調不良という名目で欠席した。

 ヴィネッタに話を聞いたのだが、エルザは活き活きと恋人の世話を焼いているらしい。
 その甲斐あってか、ほとんどベッドから降りられないセレンが自分の足で歩けた日があったそうだ。朗報にイスカが喜んでいた。

「晴天に恵まれて良かったわね」
 不意に、右手から美しい声がした。

 晴れ渡った青空を見上げていたリナリアは、びくっと肩を震わせた。
< 217 / 308 >

この作品をシェア

pagetop