花冠の聖女は王子に愛を歌う
「先日の聖女襲撃事件を受けて、私はこのところ、騎士たちと王宮を調査していた。過去にさかのぼってデイジーのために罪を犯したものを捕らえ、牢に入れてもなお、彼らは皆デイジーを庇い、デイジーを讃えるようなことを言う。このまま放置していては誰も彼女の本質に気づかず、信奉者は増えるばかりだっただろう。そこで、無理を言って陛下にこの場を設けていただき、ひと芝居打たせてもらった。全てはデイジーの異常性をその目で確認してもらい、ここにいる皆に証人となってもらうためだ。謗りは後でいくらでも受けよう」
「…………」
さすがに頭を下げられては何も言えなくなったらしい。
茶番に付き合わされた貴族は辟易したような顔をしながらも口を閉じた。
「デイジー」
一方で、ウィルフレッドはデイジーに歩み寄った。
デイジーは菫色の目を潤ませ、頬を薔薇色に染め、歓喜に震えながらウィルフレッドに抱きついた。
「ああ、ウィルフレッド様! 生きておられて本当に、本当に良かった!! もう、どうして死んだふりなどなさったのですか? 私、あまりにも悲しくて胸が潰れるかと――」
「デイジー・フォニス。君との婚約は破棄させてもらう」
自分の身体を抱きしめる白い繊手を振りほどき、ウィルフレッドは苦虫を嚙み潰したような顔で言った。
「…………」
さすがに頭を下げられては何も言えなくなったらしい。
茶番に付き合わされた貴族は辟易したような顔をしながらも口を閉じた。
「デイジー」
一方で、ウィルフレッドはデイジーに歩み寄った。
デイジーは菫色の目を潤ませ、頬を薔薇色に染め、歓喜に震えながらウィルフレッドに抱きついた。
「ああ、ウィルフレッド様! 生きておられて本当に、本当に良かった!! もう、どうして死んだふりなどなさったのですか? 私、あまりにも悲しくて胸が潰れるかと――」
「デイジー・フォニス。君との婚約は破棄させてもらう」
自分の身体を抱きしめる白い繊手を振りほどき、ウィルフレッドは苦虫を嚙み潰したような顔で言った。