花冠の聖女は王子に愛を歌う
「そ、そうですね。アンバーには感謝しないといけませんね」
「……。俺は退室したほうが良いでしょうかね? 俺も結構、いや、父上に負けないくらい滅茶苦茶頑張ったんですけどね。ねぎらいの言葉一つなしですか、そうですか……」
 はっとして前を見れば、イザークは半眼になっている。

「悪い。イザークには本当に世話になった。おれのために奔走してくれてありがとう」
 イスカは姿勢を正して頭を下げた。

「はい。いましがた存在を綺麗さっぱり忘れ去られていたことは水に流します」
「ありがとうございました、イザーク様。イスカ様を守り、支えてくださって」
 リナリアもまた頭を下げると、イザークは小さな笑い声をあげた。

「リナリアはイスカ様の妻みたいだな。結婚してないのが不思議なくらいだ」
「妻だなんて、そそんな、イザーク様! 気が早いですよ!」
 顔を真っ赤にして首と両手を振る。
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