花冠の聖女は王子に愛を歌う
もう夜も遅いが、一秒でも早いほうが良いだろうということで、これからフローラはイザークの手を借りて長距離転移魔法でバークレイン公爵邸へ行き、セレンを治癒してくれるらしい。
図々しいのは承知の上で「できれば、公爵邸で働いているクロエという侍女の傷痕も治してもらえないか」と尋ねると、彼女は快く引き受けてくれた。
イレーネとフローラ。
二人の聖女の温かい心に触れたことで、リナリアはふと考えた。
二百年前の聖女だって、そもそも好きでフルーベル王国の王に誓約書を書かせたわけではないのではないだろうか。二百年前は聖女よりも枢機卿や司教といった立場のほうが強く、命令されて嫌々ながら、仕方なく……といったことだってありえるのだ。少なくとも、聖職者たち全員が同じ考えだったわけがない。中には強く異を唱えたものだっていたはずだ。
図々しいのは承知の上で「できれば、公爵邸で働いているクロエという侍女の傷痕も治してもらえないか」と尋ねると、彼女は快く引き受けてくれた。
イレーネとフローラ。
二人の聖女の温かい心に触れたことで、リナリアはふと考えた。
二百年前の聖女だって、そもそも好きでフルーベル王国の王に誓約書を書かせたわけではないのではないだろうか。二百年前は聖女よりも枢機卿や司教といった立場のほうが強く、命令されて嫌々ながら、仕方なく……といったことだってありえるのだ。少なくとも、聖職者たち全員が同じ考えだったわけがない。中には強く異を唱えたものだっていたはずだ。