花冠の聖女は王子に愛を歌う
振り返れば、目深にフードを被った女性――カミラが立っている。
改めて見ると、目深にフードを被ったカミラは相当に怪しかった。
全身が黒一色のローブにすっぽりと包まれており、わかるのは性別と背丈くらいなものだ。
馬車の停留所付近に集まっている人々も、なんだこの人、という目でカミラを見ている。
彼女はカミラと名乗ったが、恐らく偽名だろう。
ここまで徹底して外見を隠しておきながら、本名を言うとは考えにくい。
「話ですか?」
リナリアは右肩に下げている鞄を意識した。
少し開いた鞄の入口から、青い目がこちらを見ているのを感じる。
できれば早く宿を探してアルルを解放してあげたい。
今日は朝からずっとアルルを鞄に閉じ込めている。
馬車の休憩中は皆の目を盗んでこっそり外に出してあげたりはしていたのだが、あの短時間では疲れを取るには全く足りていないはずだ。
「ああ。質問だ。天秤の一方の皿に大勢の人間。もう一方の皿にそのウサギが乗っていると仮定しよう」
「!!」
人差し指で鞄を指さされ、リナリアは緑色の目を剥いた。
改めて見ると、目深にフードを被ったカミラは相当に怪しかった。
全身が黒一色のローブにすっぽりと包まれており、わかるのは性別と背丈くらいなものだ。
馬車の停留所付近に集まっている人々も、なんだこの人、という目でカミラを見ている。
彼女はカミラと名乗ったが、恐らく偽名だろう。
ここまで徹底して外見を隠しておきながら、本名を言うとは考えにくい。
「話ですか?」
リナリアは右肩に下げている鞄を意識した。
少し開いた鞄の入口から、青い目がこちらを見ているのを感じる。
できれば早く宿を探してアルルを解放してあげたい。
今日は朝からずっとアルルを鞄に閉じ込めている。
馬車の休憩中は皆の目を盗んでこっそり外に出してあげたりはしていたのだが、あの短時間では疲れを取るには全く足りていないはずだ。
「ああ。質問だ。天秤の一方の皿に大勢の人間。もう一方の皿にそのウサギが乗っていると仮定しよう」
「!!」
人差し指で鞄を指さされ、リナリアは緑色の目を剥いた。