花冠の聖女は王子に愛を歌う
肩口で切り揃えた黒髪に橙色の目をした彼女は聖女守護役。
マナリス教会に仕える神殿騎士だ。
「どこに行ってたんですか!! 昨日からずっと探し回ってたんですからね!!」
「今日の午後六時の鐘が鳴る前には戻ると書置きしておいただろう?」
「書置き一つで安心できますか!! イレーネ様に何かあれば私の首が物理的に飛ぶんですよ!!」
「ああ、わかった。わかったよ。今度から気を付ける。これからはきちんと優秀な護衛をつけて出かけるとも」
こんなに大声で名前を叫ばれると、ローブで身を隠している意味がない。
(頃合いか)
仕方なく、イレーネはフードを外した。
月の光を集めて紡いだかのような金糸がフードから零れ落ち、アメジストの瞳が外気に晒される。
途端に、通りを歩く人々がどよめいた。
「イレーネ様!」
「聖女様!」
「《予言の聖女》様だ!!」
あちこちで悲鳴にも似た歓声が上がる。
微笑んで手の一つでも振ってやれば民衆は大喜びして寄ってきただろうが、イレーネはカミラとの会話を優先した。
「その言葉を聞くのはこれで36回目なんですけど!?」
「……数えてたのか、カミラ。凄いな」
マナリス教会に仕える神殿騎士だ。
「どこに行ってたんですか!! 昨日からずっと探し回ってたんですからね!!」
「今日の午後六時の鐘が鳴る前には戻ると書置きしておいただろう?」
「書置き一つで安心できますか!! イレーネ様に何かあれば私の首が物理的に飛ぶんですよ!!」
「ああ、わかった。わかったよ。今度から気を付ける。これからはきちんと優秀な護衛をつけて出かけるとも」
こんなに大声で名前を叫ばれると、ローブで身を隠している意味がない。
(頃合いか)
仕方なく、イレーネはフードを外した。
月の光を集めて紡いだかのような金糸がフードから零れ落ち、アメジストの瞳が外気に晒される。
途端に、通りを歩く人々がどよめいた。
「イレーネ様!」
「聖女様!」
「《予言の聖女》様だ!!」
あちこちで悲鳴にも似た歓声が上がる。
微笑んで手の一つでも振ってやれば民衆は大喜びして寄ってきただろうが、イレーネはカミラとの会話を優先した。
「その言葉を聞くのはこれで36回目なんですけど!?」
「……数えてたのか、カミラ。凄いな」