花冠の聖女は王子に愛を歌う
 小さな両手足で干し芋を掴んで食べているアルルを眺めながら、リナリアも椅子に座って干し芋を頬張った。

 食べながら考えるのは、カミラの言葉。

(カミラさんはきっと、アルルが鞄から頭を出したときに耳の形状を見て魔物だと気づいたのね。気づいていながら指摘せず、事実を伏せてくれていた。彼女には感謝しなければならないわ。でも……聖女に向いてないとか、歌は手段だとか、大事なのは心だとか……一体何の話だったのかしら?)

「……ねえ、アルル」
 アルルが干し芋を食べ終わったタイミングを見計らって、リナリアは声をかけた。
 呼び掛けられたアルルが二本足で立ち、床の上からリナリアを見上げる。

「カミラさんが言ってたでしょう、セレン王子は無事だって。あなたが一番知りたい情報だって――あれはどういう意味なのかしら。アルルには心当たりがある? セレン王子とは知り合いなの?」
 アルルは頷いた。
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