花冠の聖女は王子に愛を歌う
「なら、アルルとセレン王子はどういう関係なの? そもそもどうやって知り合ったの? かたや森で暮らす魔物。かたや王宮で暮らす王子様。接点なんてまるでないはずなのに、無関係ではない……? わからない。謎は深まるばかりだわ」
 頭を抱えていると、視線を感じた。
 手を下ろせば、アルルは変わらずリナリアを見ている。

(……そうよね。いくら考えてもわからないものはわからないのだし、深く考えるのはやめましょう。聞きたいことはこれだけだわ)

「セレン王子は、あなたにとって大事な人?」

 リナリアの問いにアルルはぴくりと片耳を動かして、頷いた。

「そうなのね……カミラさんは『セレン王子は無事だ』と言っていた。あの言い方は、まるで王宮か、彼自身に何か異変があったかのようだった。でも、王宮で大事件があったなんて話は聞いてないわ。大事件があったなら王子妃選考会なんて開いている場合じゃないわよね?」

(そういえば、王子妃はデイジー様に決まったらしいわね)

 王都を歩いている間に、市場にいた商人から噂を聞いた。
 第二王子ウィルフレッドと公爵令嬢デイジー・フォニスが婚約したと。

(デイジー様は歌がお上手なのはもちろん、人格的にも本当に優しくて素晴らしいお方だったから、彼女に決まって嬉しいわ。国王はセレン様とウィルフレッド様、どちらを王太子に選ばれるのかしら)
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