花冠の聖女は王子に愛を歌う
春の花々が咲き誇る、芸術品のように美しい庭。
庭の一角では噴水が噴き上がり、橋のかかった池まである。
果たして、ただの平民となった自分がこの大豪邸に近づいて良いのだろうか。
変な汗まで出てきた。
(私、昨日入浴してないわ。服だって薄汚れているし……こんな状態でエルザ様にお会いするのは失礼よね。日を改めましょう)
聳え立つ高い門の前ですっかり怖気づき、リナリアは踵を返した。
帰ろうとする気配を察したらしく、手に持った鞄からアルルがわずかに顔を出す。
やっと着いたのに、なんで帰るの? と訊きたいのだろう。
「ごめんね、アルル。この屋敷を訪れるのは明日、きちんと身を清めてからにしようと思うの。いえ、上等な服も買わないといけないから、一週間後くらいになるかしら――」
「――リナリア?」
閉ざされた門の前でこそこそ話していると、不意に名前を呼ばれた。
アルルが素早く鞄の中に引っ込み、リナリアの肩が震える。
顔を向ければ、門の向こうにお仕着せを着た背の高い侍女と目を見張るほどの美少女が立っていた。
庭の一角では噴水が噴き上がり、橋のかかった池まである。
果たして、ただの平民となった自分がこの大豪邸に近づいて良いのだろうか。
変な汗まで出てきた。
(私、昨日入浴してないわ。服だって薄汚れているし……こんな状態でエルザ様にお会いするのは失礼よね。日を改めましょう)
聳え立つ高い門の前ですっかり怖気づき、リナリアは踵を返した。
帰ろうとする気配を察したらしく、手に持った鞄からアルルがわずかに顔を出す。
やっと着いたのに、なんで帰るの? と訊きたいのだろう。
「ごめんね、アルル。この屋敷を訪れるのは明日、きちんと身を清めてからにしようと思うの。いえ、上等な服も買わないといけないから、一週間後くらいになるかしら――」
「――リナリア?」
閉ざされた門の前でこそこそ話していると、不意に名前を呼ばれた。
アルルが素早く鞄の中に引っ込み、リナリアの肩が震える。
顔を向ければ、門の向こうにお仕着せを着た背の高い侍女と目を見張るほどの美少女が立っていた。