花冠の聖女は王子に愛を歌う
 落ち着いた茶色のカーペットが敷き詰められた床。豪華なシャンデリア。
 ガラスの嵌め込まれた大きな窓からは白い陽光が射し込み、 ソファに座る姫君の美しさをより一層、引き立てていた。

 優雅に紅茶を飲んでいるエルザの姿を見て、リナリアは一瞬、呼吸を忘れた。
『バークレインの赤薔薇』と人々が讃えるわけだ。
 まるで絵画を見ているような気分だった。

「失礼致します」
「どうぞ」
 リナリアは一礼して居間に足を踏み入れた。
 淑女としての正しい足運びと姿勢を思い出しながら、一歩一歩、重厚な絨毯を踏みしめて進んでいく。
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