花冠の聖女は王子に愛を歌う
「いえ、『情報を聞き出した』という表現が正しいですわね。王子には『魔物になる呪い』に加えて『言葉を伝えられない呪い』がかけられているようです。呪いをかけた犯人にとって不都合な事柄は言わせない。そういうことなのでしょう。しかし、犯人の目星はつきます」
「誰ですか!?」
 リナリアはテーブルに両手をついて身を乗り出した。

 エルザに視線で嗜められ、腰を下ろす。
 着席したリナリアを見て、エルザは再び唇を開いた。

「恐らくはロアンヌ様か、その一派の仕業でしょう。セレン王子は政務に耐えられない身体です。一方、秘匿されたイスカ王子は至って健康で、王妃にとっての不安要素。愛する息子ウィルフレッドを玉座に座らせるには邪魔でしかありません。『暗殺』ではなく『魔物化させて追放』。なんとも狡いやり方です。ご本人を前にして口にするのは憚られますが、この方法ならば王子が命を落としたとしても、周囲は咎めにくい。『わたくしはマナリス教の敬虔な信徒として、女神の導きに従っただけです』とでも言えば、国王も口を閉じざるを得ないでしょうし――ああ、全く。頭の痛い話です」
 実際に頭痛を覚えたのか、エルザはこめかみを押さえた。
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