花冠の聖女は王子に愛を歌う
「……エルザ様。私には全くわかりません。イスカ王子を魔物化させることが何故マナリスの導きになるのですか? そもそも何故、イスカ様は存在を隠されているのですか?」
リナリアは隣のイスカを見た。
イスカは俯き、何も言わない。
「イスカ様はセレン様の双子の弟君なのでしょう? ならばイスカ様は第二王子、ウィルフレッド様は第三王子になるはずです。それなのにウィルフレッド様はこの国の第二王子とされている。一体どうしてこんな異常事態になっているのですか? ありえません。この国はおかしい。狂ってます」
言い過ぎかもしれないが、隣で寂しげに俯いているイスカの姿を見ていると、言わずにはいられなかった。
「……ええ。そうですわね。わたくしも狂っていると思いますわ」
エルザはため息をつき、語り始めた。
そもそもの発端は二百年前。
この国に双子の王子が生まれた。
双子の王子は両者共に優れた魔導士だった。
兄が魔法で山を割れば、弟は魔法で海を割った。
国で一、二を争う魔力の持ち主であり、学問にも武芸にも秀でた双子の姿を見て、国王夫妻は大いに喜んだ。
双子が手を取り合えば、フルーベルはより豊かで、より素晴らしい国になる。
そう信じて疑わなかった。
リナリアは隣のイスカを見た。
イスカは俯き、何も言わない。
「イスカ様はセレン様の双子の弟君なのでしょう? ならばイスカ様は第二王子、ウィルフレッド様は第三王子になるはずです。それなのにウィルフレッド様はこの国の第二王子とされている。一体どうしてこんな異常事態になっているのですか? ありえません。この国はおかしい。狂ってます」
言い過ぎかもしれないが、隣で寂しげに俯いているイスカの姿を見ていると、言わずにはいられなかった。
「……ええ。そうですわね。わたくしも狂っていると思いますわ」
エルザはため息をつき、語り始めた。
そもそもの発端は二百年前。
この国に双子の王子が生まれた。
双子の王子は両者共に優れた魔導士だった。
兄が魔法で山を割れば、弟は魔法で海を割った。
国で一、二を争う魔力の持ち主であり、学問にも武芸にも秀でた双子の姿を見て、国王夫妻は大いに喜んだ。
双子が手を取り合えば、フルーベルはより豊かで、より素晴らしい国になる。
そう信じて疑わなかった。