花冠の聖女は王子に愛を歌う
 フルーベル王国の輝かしい未来に暗雲が立ち込めたのは、双子が十三歳を迎えたとき。

 慣例通りに第一王子を王太子とし、宣誓式を行うと宣言した国王に弟の第二王子が異を唱えた。

 ――自分のほうが兄よりも優れている。自分たちは双子であり、ほとんど同時期に生まれた。たった五分遅れて生まれただけで自分が王になれないのはおかしい。

 ――ふざけるな、私のほうがお前よりも優れている。王に相応しいのはこの私だ。

 兄は弟の意見をはねつけた。
 双子の王子は互いに玉座を望んだ。

 兄派と弟派。
 フルーベル王国は真っ二つに分かれた。

 この戦いにより王国は滅亡の危機にまで陥ったが、滅亡寸前に辛くも兄派の軍が勝利した。

 弟は最期に狂ったような哄笑を上げ、あろうことか、この国の《光の樹》を魔法で切り倒した。

 マナリス教会の最高権力者――聖女たちはこの所業に怒り狂った。
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