花冠の聖女は王子に愛を歌う
 ――女神から賜った神樹を切り倒すとは何事か。

 マナリス教会は国王となった双子の兄に破門を言い渡した。
 
 ――今後一切、マナリス教会はフルーベル王国に関与しない。女神マナリスの加護を失ったフルーベル王国はいずれ全ての魔素《マナ》を失い、大挙して押し寄せる魔物の災禍により滅ぶであろう。

 未来を確実に言い当てる《予言の聖女》の言葉を聞いたフルーベル王国の国民たちは一斉蜂起し、国王一家を処刑することでマナリス教会に許しと助けを求めた。

 次々と教会に押し寄せ、嘆願する人々を見て、マナリス教会の聖女たちは協議した。

 ――今後フルーベル王国の王家に生まれた双子の弟は悪魔とみなそう。その血を以て先祖の罪を贖わせれば、いずれマナリス様はお許しになるはずだ。
 ――いや、生まれたばかりの赤子の命を奪っては信徒の反発を招く。
 ――では、成人を迎えるまで獄に繋いだ後、聖なる炎で浄化させるか?
 ――その罪に相応しい魔物の姿に変えて森へ追放するのはどうだ?

 ろくでもない協議が行われた結果、最終的に条件付きでマナリス教会はフルーベル王国を許した。

 ――フルーベル王国に生まれた双子の王子は不吉の象徴である。もしも再び双子の王子が生まれた場合、十三を迎えたその年に決闘を行い、生き残った勝者を王とせよ。これは聖女の言葉。すなわち女神マナリスの言葉である。
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