花冠の聖女は王子に愛を歌う
夕刻を過ぎた頃、出かけていた公爵夫人ヴィネッタ・バークレインが馬車に乗って帰宅した。
赤い髪に真紅の目をした美女は宮廷魔導師団長である夫ジョシュアと至急連絡を取り、解呪魔法の専門家を探すと言ってくれた。
さらに、イスカの呪いが解けるまでリナリアがこの屋敷に滞在することを許してくれた。
「エルザから話は聞いています。あなたは王子妃選考会で緊張のあまり嘔吐してしまったエルザを庇い、バークレインの名誉を守ってくれた恩人。無事イスカ様の呪いが解けた後、働き口を探すのならば力になりましょう」
「なんならこの屋敷で侍女として働いても良くってよ? 待遇は保証するわ」
微笑むヴィネッタとエルザに、リナリアは深く頭を下げたのだった。
居間でヴィネッタたちと話し込んでいる間に夜も更けた。
リナリアは自分にあてがわれた二階の客室で眠る努力をしたのだが、硬い地面や板に敷布を敷いただけのベッドに比べて公爵邸のベッドがあまりにも高級なせいか、どうにも寝付けなかった。
(……いや、眠れないのはベッドのせいではないわね)
いまリナリアの頭の大部分を占めているのはイスカのことだ。
何を考えても、結局思考がそこに行きついてしまう。
リナリアは良い香りがする清潔な毛布を身体から離して起き上がった。
寝間着のまま廊下を歩き、玄関の扉を開けて外に出る。
赤い髪に真紅の目をした美女は宮廷魔導師団長である夫ジョシュアと至急連絡を取り、解呪魔法の専門家を探すと言ってくれた。
さらに、イスカの呪いが解けるまでリナリアがこの屋敷に滞在することを許してくれた。
「エルザから話は聞いています。あなたは王子妃選考会で緊張のあまり嘔吐してしまったエルザを庇い、バークレインの名誉を守ってくれた恩人。無事イスカ様の呪いが解けた後、働き口を探すのならば力になりましょう」
「なんならこの屋敷で侍女として働いても良くってよ? 待遇は保証するわ」
微笑むヴィネッタとエルザに、リナリアは深く頭を下げたのだった。
居間でヴィネッタたちと話し込んでいる間に夜も更けた。
リナリアは自分にあてがわれた二階の客室で眠る努力をしたのだが、硬い地面や板に敷布を敷いただけのベッドに比べて公爵邸のベッドがあまりにも高級なせいか、どうにも寝付けなかった。
(……いや、眠れないのはベッドのせいではないわね)
いまリナリアの頭の大部分を占めているのはイスカのことだ。
何を考えても、結局思考がそこに行きついてしまう。
リナリアは良い香りがする清潔な毛布を身体から離して起き上がった。
寝間着のまま廊下を歩き、玄関の扉を開けて外に出る。