花冠の聖女は王子に愛を歌う
燃えるような赤い髪と赤い目。
涼やかな目元に、大勢の淑女を虜にしてきたであろう秀麗な顔立ち。
彼はその長身に宮廷魔導師しか着用を許されない深紅のローブを羽織っている。
「感心している場合ではありませんわ、お兄様! わたくしよりもお兄様のほうが魔法に長けておられますでしょう!? なんとかしてくださいませ! このままでは公爵邸が滅茶苦茶になってしまいます!」
パリン! ガシャン!! ドーンっ!!
「いや、俺も何故ああも頑なに王子が解呪を拒むのか不思議だったんだ。魔物の表情なんてわからないけれど、解呪魔法の使い手を紹介したとき、王子の目は輝いて見えたからな。それがどうして、いざ呪いが解ける段階になると逃げ出したのか――でも、考えてみたら理由は明白だった。王子の立場になってみればわかることだ。俺でも全力で逃げる。きっとお前もだ。間違いない」
「何故ですの? もったいぶらないで理由を仰ってくださいませ」
エルザは形の良い眉をひそめた。
リナリアもエルザの隣でイザークを見上げた。ヴィネッタも息子を見ている。
涼やかな目元に、大勢の淑女を虜にしてきたであろう秀麗な顔立ち。
彼はその長身に宮廷魔導師しか着用を許されない深紅のローブを羽織っている。
「感心している場合ではありませんわ、お兄様! わたくしよりもお兄様のほうが魔法に長けておられますでしょう!? なんとかしてくださいませ! このままでは公爵邸が滅茶苦茶になってしまいます!」
パリン! ガシャン!! ドーンっ!!
「いや、俺も何故ああも頑なに王子が解呪を拒むのか不思議だったんだ。魔物の表情なんてわからないけれど、解呪魔法の使い手を紹介したとき、王子の目は輝いて見えたからな。それがどうして、いざ呪いが解ける段階になると逃げ出したのか――でも、考えてみたら理由は明白だった。王子の立場になってみればわかることだ。俺でも全力で逃げる。きっとお前もだ。間違いない」
「何故ですの? もったいぶらないで理由を仰ってくださいませ」
エルザは形の良い眉をひそめた。
リナリアもエルザの隣でイザークを見上げた。ヴィネッタも息子を見ている。