花冠の聖女は王子に愛を歌う
 抜けるような白い肌。月光を受けて輝く雪色の髪。その瞳はサファイア。

「月光の使者。あるいは神に遣わされた天使――あまりにも彼が美しすぎて、わたくしは本気でそう思いましたのよ」

 脳髄が痺れるような衝撃を受け、動けずにいたエルザに彼は近づき、柔らかく微笑んだ。

 ――初めまして。私はセレン・フレーナ・フルーベル。貴女の名前を聞いてもいいですか?

 翌朝、エルザはロアンヌの前に跪き、セレンに仕えたいと訴えた。
 エルザの再三にわたる訴えをロアンヌが聞き入れたのは実に半年後のことだった。

 誠心誠意仕えるエルザに心を許してくれたらしく、仕え始めた一年後、ベッドに横たわるセレンはとっておきの秘密を打ち明けてくれた。

 絶対に誰にも言わないでね、君を信用したから話すんだよ、と前置きして。

 ――私には双子の弟がいるんだ。君と出会ったあの日の夜は久しぶりに体調が良かったから、人目を忍んで、こっそり弟に会いに行っていたんだよ。
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