花冠の聖女は王子に愛を歌う
「セレン王子は弟は自分に良く似ていると仰っていましたわ。入れ替わってもきっと誰も気づかないくらいにそっくりだ、と。いまのうちに覚悟したほうが良くってよ。絶世の美女ならぬ絶世の美男と対面することになるのですから」
「…………」
 リナリアは膝の上でぎゅっと手を握った。

(私はそんな美青年を抱きしめ、撫で回してしまったの……?)

 イスカにした数々の行為を思い出し、顔から血の気が引いていく。
 恥ずかしさのあまり逃げたくなった。

「無事呪いが解けたぞ」

 イザークの声が聞こえて、どきーん!! と心臓が跳ねた。
 心臓はそのまま暴れ始め、身体中から汗が噴き出る。

「まあ! なんてことなの、本当にセレン王子にそっくりだわ!!」

 エルザが感動した様子で立ち上がり、ヴィネッタと共に廊下に出ていった。
 挨拶を交わす声が聞こえる。
 
 リナリアはそちらを見る勇気が出せず、俯いていた。
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