花冠の聖女は王子に愛を歌う
 やがて、皆が部屋の中へと入ってきた。
 足音が近づくにつれ、リナリアの心臓はますます音を大きくした。

「なんで俯いてるんだ?」

 知らない声が――低く透き通った男性の声が聞こえて、リナリアはびくっと肩を震わせた。

 ヴィネッタたち三人は並んで向かいのソファに座ったが、紺色の脚衣を着用したその何者かは、リナリアの傍に立った。

 すぐ隣に立たれては、もう無視を貫き通すことはできない。

 どっ、どっ、どっ、どっ――
 激しい鼓動の音を聞きながら、リナリアは意を決して顔を上げた。

 そして、ひと目見て、絶句。

 艶やかな白銀の髪。夏空をそのまま切り取ったかのような、深い青の瞳。
 身に纏うのは上等な上着と紺色の脚衣、茶色の靴。
 サイズが微妙に合っていないのは仕方ないところだろう。
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