花冠の聖女は王子に愛を歌う
「あいつは『君がいま一番知りたい情報だ』などと、思わせぶりなことを言っていたな。 リナリアに対しても、聖女には向いていないとか、歌は手段だとか」
「意味がわかりませんよね。私がイスカ様の運命を変える鍵になるとも言ってましたけど、あれは何なのでしょう。私がもしイスカ様の力になれるのなら、鍵にでも何にでもなりたいですが――」

「……リナリア、お待ちなさい。その女性は確かに『リナリアがイスカ様の運命を変える鍵になる』と言ったの?」
 リナリアの台詞を遮って声を上げたのはヴィネッタ。

「はい、そうです」
 イスカと揃って前を向くと、ヴィネッタは自分自身も困惑しているかのように、瞬きの回数を増やしながら言った。

「……エルザと同じくらいの身長の女性だと言ったわね。わたくし、宗教国家マナリスで一度だけ《予言の聖女》イレーネ様のお姿を拝見したことがあるの。イレーネ様は金髪に紫水晶の瞳をした美しい女性だったわ。もしかしたら、その女性はイレーネ様だったのではないかしら?」

「《予言の聖女》?」
 リナリアは目をぱちくりさせた。
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