花冠の聖女は王子に愛を歌う
 聖女とは何か。
 大陸に広く信仰されているマナリス教において聖女とは『奇跡を起こす力を持った清らかな女性』のことである。

 女神マナリスに特別に愛され、身体のどこかに金に輝く《光の花》の紋章を持つ聖女は人々から『神懸かり』とも呼ばれる。女神の恩寵なのか、不思議なことに、聖女たちは成長はするが老いはしない。

 マナリス教の聖地はかつて女神が地上に降り立った場所――大陸のほぼ中央にあるマナリス聖都市。

 宗教国家マナリス聖都市において、序列第一位が五人の聖女たち。

《予言の聖女》は女神の神託を授かり、遠近問わず、未来を予知する力を。
《治癒の聖女》は万物を癒す力を。
《結界の聖女》は魔を阻む結界を張る力を。
《心眼の聖女》は人の心を見通し、真偽を見抜く力を。

 そして、《花冠の聖女》は《歌》を以て植物と――《光の樹》とさえも交信する力を持つという。

 ただし現在、《花冠の聖女》は見つかっておらず、マナリス教会は各地に捜索隊を派遣して彼女を探している。
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