花冠の聖女は王子に愛を歌う
 フルーベル王国の国王が『国で一番の歌姫をウィルフレッドの妃として迎える』と言い出したのも、《花冠の聖女》を見つけ出そうしたのではないかという噂がある。

 何でも一年前、《予言の聖女》は《花冠の聖女》はフルーベル王国にいると予言したらしいのだ。
 そして、《予言の聖女》の予言が外れたことはこれまで一度もない。

「……《予言の聖女》がリナリアのことを『イスカ様の運命を変えられる女性』だと認め、『聖女には向いていない』と言ったのだとしたら……。神に仕える本物の聖女が、意味もなく聖女という単語を口に出すとは思えませんわね」
 エルザは神妙な面持ちで呟いた。

「つまり、リナリアが《花冠の聖女》ってことになるな」

 イザークが言い、この場にいる全員の視線がリナリアに注がれた。
 給仕役のユマたちもリナリアを見ている。

「………………えっ? ええっ!!?」
 リナリアは唖然とし、我に返ると同時に大慌てで両手を振った。

「いえいえ、お待ちください!! ユマさん、私の肌を見たあなたならわかりますよね!? 私の身体のどこにも花の紋章なんてなかったですよね!?」
 助けを求めてユマを見ると、ユマは頷いた。
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