花冠の聖女は王子に愛を歌う
「はい。証言いたします」
「ですよね、ほら! それに、私には植物と交信する力なんてありませんよ!! 言い伝えによると、《花冠の聖女》は歌の一節だけで花のつぼみを開かせ、植物の成長を促進させると聞きますが、私がチェルミット男爵邸でいくら歌っても庭の草木は歌う前の姿のまま、いきなり急成長することもありませんでした!! ねっ、イスカ様! 私が森でいくら歌っても森の植物に変化はなかったですよね!?」
 リナリアはユマから視線を転じ、今度は隣にいるイスカに同意を求めた。

「ああ。リナリアは抜群に歌が上手いが、歌が周りの植物に影響を及ぼすことはなかったな」
 顎に手を当ててイスカは言った。

「でも、ある日突然聖女の力に目覚めて、身体に花の紋章が浮かび上がることもあるって聞いたぞ?」
 イザークの発言に、全員が再びリナリアを見つめる。

(だからどうしてみんなそんな目で私を見るの!?)
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