花冠の聖女は王子に愛を歌う
「二次審査直前、何故あなたのカップにだけ毒が入れられたのか、全くわからないと言うの? 一次審査の時点であなたの勝ちが確定したも同然だったからですわよ。聞けば、ウィルフレッド様もあなたの歌だけ褒められていたそうではありませんか。恐らくその話を聞きつけた他の歌姫の支援者による妨害工作でしょうね」
 何も言えずにいると、イザークが興味津々といった目を向けてきた。

「なあ。食事が終わったら一曲歌ってくれないか、リナリア。ここまで言われては、君がどれほど上手いのか気になる」
「えっ?」
「わたくしも聞きたいですわね。何か問題がありまして?」
 ヴィネッタに尋ねられたが、確かに問題はない。
 単純に、気恥ずかしいというだけだ。

「わたくしも久しぶりにリナリアの歌を聞きたいですわ」
「おれも聞きたい」
「……わかりました」
 イスカにまで言われては断れず、リナリアは頷いた。
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