花冠の聖女は王子に愛を歌う
「いや、あのな」
 イスカは呆れたように言って立ち上がり、リナリアのすぐ傍に腰を下ろした。

「まあ確かに、お前が《花冠の聖女》だったら助かっただろうけどさ」

 さらりと放たれたその言葉を聞いて、リナリアは俯いた。
 やはりイスカもリナリアが《花冠の聖女》であって欲しかったのだ。

「俯くな」
 イスカはリナリアの頬を両手で挟み、強制的に顔を上げさせた。
 二人きりの部屋の中、サファイアのような蒼い瞳が至近距離からリナリアを見つめる。
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