花冠の聖女は王子に愛を歌う
「わかったらもう泣くな」
 思いがけないほど優しい声で言って、イスカは指先でリナリアの頰を拭った。

「お前が泣くのは辛いし悲しい。お前の泣き顔を見てると堪らないんだ。どうしたらいいのかわからなくなる」
 イスカは両手を頬から離し、リナリアを抱き寄せた。

 触れた肌越しにイスカの温もりを感じ、頬の温度が急上昇していく。

「……おれが真っ当な本物の王子だったらお前に求婚できたのになあ」

 イスカはリナリアの髪を撫でながら、ぼやくように呟いた。

「!!!?」
 聞き捨てならない言葉を聞いて、リナリアは顔を跳ね上げた。
 もはや呑気に抱かれている場合ではなく、イスカの胸を両手で押して身体を離す。
 問い詰めなければならない。いますぐに。

「きゅ、求婚って、えっ?」
 裏返った声で尋ねる。
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